うぐいす色の実

[Edit]

妖精で光を集めるゲーム Flur

Flurイメージ画像

妖精を操り漂う光を集めるゲーム Flur――小太郎ぶろぐ


上記のサイトがソースになりますが、
ちょっと一風変わったフラッシュゲームを見つけました。

簡単に説明すると、
赤い玉に触れると妖精は消え、しばらく復帰するまでに時間がかかります。
光の妖精を操作して光の球を集めて85項目の「achievement」を達成していくゲーム。

要は英字でこれを達成させなさい、という表示が出るので、
その表示を達成すればステージクリアとなるわけです。
ちなみに、操作はマウス一つで出来ます。


[マウス] 移動 
[ESC] achievement表示/戻る 
色つきの球を保有している場合は左?クリックで特殊効果(つまり上記の画像のことです)
特殊効果では光を持っていない時より、
緑の光が簡単に妖精へと吸い込まれたりといろんな効果が光の色によって違います。


下記のサイトから、このゲームで遊べます。
※上記の小太郎ぶろぐからでもいけます。

タダですぐに遊べる★インスタントゲーム
Play Flur

スポンサーサイト

PageTop

[Edit]

#29 ヒワリの選択 4/4

窓から一羽、寂しげな風を連れて黒いチェルシーが入ってくる。
その瞬間にディアラはヒワリを前へと突き放し、床へとヒワリは叩きつけられた。


「これで終了。あとはこれからが楽しみね」


黒いチェルシーはディアラの肩へと留まり羽繕いをする。
ヒイラギはヒワリに近付こうとするが、ヒワリの周辺だけ氷の壁を張った。


「その氷早く溶かないと、ヒワリ凍えちゃうからね。じゃ、ロワンによろしく」

ディアラは黒いチェルシーと共に光り、白い光が部屋を包み込むとディアラも黒いチェルシーもそこにはおらず、窓のカーテンが月明かりに照らされ風になびいているだけだった。


「早くその氷を溶かしてあげなさい、ヒイラギ」

「わ、わかった‥」


シワスの声にヒイラギはファイアを使い溶かしていると、階段から駆け上がる音が聞こえロワンたちが戻って来た。

「2人とも無事か!?ヒワリは‥!――」


ロワンはヒワリの姿を見て言葉を失い、フォーンは口に手を抑えた。

「ヒワリ‥‥!?」
「悪いが手伝ってくれんか!?」

シワスがロワンたちに声をかけると、みんながファイアを使い氷を溶かすと体を冷やしたヒワリにヒイラギはサンやケアを使ってヒワリの体を温めた。

ヒワリの意識はなく、ヒイラギのケアでも右肩の傷は治せなかった。


「‥‥ロワン、ヒワリさんのこと教えてくれませんか?僕はヒワリさんのこと知りたいです」

「だが知ったら‥」


「大事な仲間でしょ‥?」


フォーンに言われ、ロワンは躊躇し黙り込んだ。

「知った方がいいこともある」


ユラもフォーンやエンゼルに賛成してロワンの回答を待つ。


「長くなるぞ?話は‥10年前にさかのぼる。『クラズベリーの夜』の時だ」


ロワンは静かに口を開いた。

「知ってます。クラズベリーってクラズベリーの夜が起きたという町で‥」
「そして、黄金の血と呼ばれたキュウソスの町‥だった場所だよね」


エンゼルに続いてフォーンに言われ、ロワンは頷く。

「オレはその時クラズベリーに居て『クラズベリーの夜』に合う直前までヒワリの側にいた。簡単に言えば、ヒワリをヴァンパイアから守るためだった」


PageTop

[Edit]

#28 ヒワリの選択 3/4


「――っ!!」

一瞬に痛みが全身へと駆け巡ったが、ディアラは血をすすっているわけではないようだ。
印の上に傷を作られると、急に心臓が波打つ。

鼓動が聞こえたが波打つ度に心がヒドく傷み体中に熱を帯び、傷みに耐えきれずヒワリは叫び声をあげる。


「ヒワリ!」


ヒイラギは氷の壁にファイアを当てるが壁は存在したままだ。

――‥くそッ!溶けろ!


何度と当てるが氷は溶けない。
そんな様子を見てか、ディアラは突然氷の壁を解いた。

ヒイラギの目に焼き付いたのは右肩に傷を作られ顔をしかめるヒワリと口の周りについた血をぬぐい取りその血を舐めるディアラの姿だった。


「流石キュウソスの血、絶品よね。ご馳走さま」

三日月のような笑みでディアラはヒイラギに笑いかける。





鳥籠のような場所ではメノウがボロボロの姿で宙を飛び、高嶺からロワン達を見下ろしていた。

「何あいつ‥片目のくせに強いな」

「こらぁ!下りてきなさい!」


籠の底でフォーンがメノウに向かって言う。

――弱いクセに五月蝿いやつ‥。



『遊びは終わり。メノウ、帰るわよ』


突然ディアラの声が頭に響き、メノウはホッと安堵する。


「まっ‥上手くいったぽいし、今日はここまでか」


メノウは自分の黒い翼で全身を覆い隠すと、無数の黒いチェルシーへとなり4人の元へと勢い良く飛び込む。

「お姫様の元へ行ってあげなよぉ」


そうメノウの声が響きわたると、さっきまで鳥籠だった場所は元通り、カルネの町へと戻っていた。

「戻れたのでしょうか?」

「ロワン、ヒワリ危ないんじゃない!?」


「わかってる!」

フォーンに言われ、ロワンは駆け出しヒイラギの家へと急いだ。


PageTop

[Edit]

#27 ヒワリの選択 2/4

「ヒワリ!こんな奴のことを聞くことない!‥‥うぐっ!?」

シワスの声にヒワリはシワスへと目を向けた。
シワスとヒイラギの体に氷がまとわりつき、動けなくさせている。


「ねぇ、ヒワリ。貴方知ってるでしょ?町一つ潰した私の力、今の貴方じゃ倒せないことくらい。
早くしないと私そんなに気が長くないからね、殺しちゃうかもよ」

氷は徐々にシワスやヒイラギを縛り付けますます二人は苦しそうな表情を見せた。


――‥‥どうすればいいの?

ふと小さな風がヒワリの髪をかすめ、通り過ぎた。
風が過ぎ去った方を見ると、風と思ったのは2羽のチェルシーで、つがいはディアラに目掛けて飛び込もうとしていた。

「チェルシー!?」


しかし、暗闇から黒いチェルシーが現れると、飛び込んできたメスのチェルシーを叩き落とした。
これを見たオスのチェルシーは再び黒いチェルシーに迎え撃つ。

メスのチェルシーは落ちてからも動こうとしなかった。


「や、やめて!‥わかったから!二人を離して。チェルシーに傷つけないで!」

「いい子。あの頃と比べたら、随分物分かりよくなったわね」


そうディアラはヒワリの耳元で囁く。

ヒワリの言う通り氷から二人を解放させ、今度はディアラとヒワリの周囲に氷の壁を張った。
黒いチェルシーは消え、オスのチェルシーはメスのチェルシーの元へ寄り添う。

そんな中、ヒイラギは急いでメスのチェルシーに寄って抱え込み、
そんなヒイラギの姿を見てヒワリはホッと安堵した。


「自分の心配をしたらどう、ヒワリ?まだ終わってないんだから」

ディアラはそう話すとすぐに印のある右肩へ噛み付いた。


PageTop

[Edit]

#26 ヒワリの選択 1/4



「ヴァンパイア‥?」

ヒイラギは驚きを隠せず、茫然とヴァンパイアを見た。


「ディアラ?どうして‥」

ヴァンパイアはヒワリに鼻で笑い、手のひらから現れた氷の刃を向けるとヒワリに向かって飛ばした。
攻撃はそれ、ヒワリの後ろにある壁に氷が突き刺さる。


「言ったでしょ?今度は大事な物を奪うって」

ヒイラギは瞬時にヴァンパイア――ディアラに向かって手を伸ばし、身構える。


「ヒワリから離れろ」

「威勢いいわね、でも打てないでしょ?そんな心持ちじゃぁね」

ヒワリはディアラの話す通りに、ヒイラギを見た。
魔法を放つつもりではいるが、心が揺れているのか集中出来ていないらしい。


「ヒイラギ、躊躇している場合か!」

「でも‥!」


シワスがヒイラギに話し掛けるが決心がつかず、表情は苦しそうだ。


「これじゃ、話にならないじゃない。そうね、交換条件というのはどう?」

「交換‥条件?」


ディアラはヒワリの背後に回り、印のある肩に手を触れた。



「町か‥それとも、ヒワリの未来か」

――‥!?


「未来って!?」

「もちろん、すぐじゃないわ。徐々にね。さぁどうする?」


未来‥。
私の未来は‥―――。

PageTop

[Edit]

#25 ヴァンパイアの襲撃 5/5

「ディアラはキュウソスのとこだよ」

「キュウソス‥?」


エンゼルは耳を疑う。


「キュウソスって、クラズベリーの夜にいなくなったはずじゃ?」

「あとはそこにいる兄さんに聞きなよぉ。よぉく知ってるはずさ」


メノウは魔物数を増やし、ロワンたちに戦闘させた。




その頃ヒイラギはヒワリの腕を掴み引き寄せた。

「お前、なんでヴァンパイアがくるなんて言った?どうしてわかる!?」

「ヒイラギ!止めないか!」


シワスに止められヒイラギはヒワリを放す。

「お前が魔物を憎むのはよくわかる!だが、そんなことをしてもどうなる?ヒワリを守ってあげるのがお前の仕事だろ?」

つがいのチェルシーはヒワリの肩に留まり心配そうに顔を覗き込んだ。

ヒワリは窓の外を見ていた。
昨日までの綺麗な町並みが今ではあちこちで煙が上がっている。


「どうしたらいいかな‥」

ヒワリがそうつぶやくと、屋根の上がドンドンと騒がしく鳴り響いた。


「なんだ?」

ヒイラギが身構える。
急にヒワリの前にあった窓が開き窓から赤い髪のヴァンパイアが入ってきた。


「シールドまで張っちゃって。みんなに守られているのね、お姫様」

赤い髪の妖艶なヴァンパイアはヒワリに向かって微笑んだ。




パリーンーー‥‥!


ふとエンゼルの中でガラスが割れた時のような衝動が走る。

「どうした?」


ぼーっとするエンゼルにロワンが尋ねる。

「今‥‥シールドが破れました!」

「何!?」


それを聞いたメノウはますます喜んだ。


「あたしが料理してやるよぉ。ディアラの邪魔させないんだからね」

急に、メノウの翼から真っ黒なチェルシーが飛び立ち4人が気がつくとそこはカルネの町でなく、黒いチェルシーが飛び回る大きな鳥籠の中にいた。

「喰らえ」


黒いチェルシーはロワン、フォーン、エンゼル、ユラに目掛けて襲い始める。

PageTop

[Edit]

#24 ヴァンパイアの襲撃 4/5


「なぁんだ‥、もうやられちゃたの?」

翼が一回り小さい魔物がつまらなさそうにそう言った。


「仕方がないわよ。相手がそれだけ強いんだから」

この二人の声を聞いて、ロワンはハッとした。
忘れるわけがない。

「ディアラ、メノウ!お前らか!」


ロワンは俊敏な彼女たちに矢を放ったが、安易にかわして矢の届かない大きな屋根の上に降り立った。



「やっぱいやだぁ、あいつ!レディに失礼じゃない?ねぇ、ディアラ!」


「そんなこと言わないの。あら久しぶりね、ロワン。お姫様は元気?風の噂では体調悪そうだけど」

ロワンはかまわず矢を放った。
メノウはクスクス笑う。

「怒った、怒った!」


ロワンはもう一度矢を放とうとするが、エンゼルに止められる。

「止めましょう。相手の手中に踊らされるだけです」


メノウと呼ばれた少女のヴァンパイアは、パチパチと拍手する。

「その子の方が賢いじゃん!見直した!」


「何、あの子?」

「何を考えているのかわからない子ですね‥。てか、なんでロワンはあの子たちを知ってるんですか?」

「後にしてくれ、エンゼル」


それを聞いて、メノウは面白おかしそうに二人を笑った。

「へぇ?仲間なのに話してないんだぁ?それはどういうことかな?ん?」


「何の話しよ!」

フォーンはメノウに身構える。

「メノウ、あとはお願いね」


「待て、ディアラ!」

ロワンは矢を放つが遠すぎて的から外れる。
ロワンの撃つ矢の前にメノウが現れる。


「何してんのぉ?あたしと遊ぶんでしょ?」

メノウは三日月のような笑みをこぼしながらただ体当たりをし、ユラだけはその攻撃をかわした。


「赤いやつはどこへいった?」

メノウはにっこり笑う。

PageTop

[Edit]

#23 ヴァンパイアの襲撃 3/5


「エンゼル、フォーン、ユラ。ヴァンパイアがくる。みんな支度をしろ」

「ヴァンパイア!?どうしてわかるんですか?」

「ヒワリが言ってた。たぶん、すぐに来る」


「なぜわかる?いつ来るかもわからない敵に?」

珍しくユラが口を開いた。


「それは‥――」

ロワンはそう言い掛けると、近くで大きな鳴き声が聞こえた。
耳が痛くなるような高い鳴き声だ。


「なんだ?この声は‥?」

シワスは驚きうろたえた。


「来ちまったな」

「ヒワリはどうするの?ロワン」


フォーンは心配そうだ。

「ヒワリはここに残す。シワスとヒイラギも一緒に。今は時間がない」


シワスとヒイラギは先に二階へと上がった。その後、エンゼルがシールドを張る。

「二階全体にシールドを張りました。これで破れたとしてもわかります」


「よし、じゃ行くか!」


ドアから飛び出すと、魔物たちが町の中でちらほらと見かけた。


逃げ惑う町の人を魔物が追いかける。
ロワンはその魔物目掛けて、矢を射た。

エンゼルは襲いにかかる魔物にファイアーを当て、フォーンはサンダーで周りの敵を散らした。
そこをユラが二刀流の剣で凪払う。

ほとんどの敵を倒しえると、翼を広げた素早いニ体の魔物が勢い良く駆け巡る。

PageTop

[Edit]

#22 ヴァンパイアの襲撃 2/5

起きあがると、ロワンが側に眠ったまま座っていた。
ヒワリが起きたことに気付いたのか、つがいのチェルシーも目を覚ましヒワリの側まで飛んできた。


「もう帰ってもいいのに」

離れようとしないチェルシーを見て、ヒワリはクスッと笑った。



窓の外をみると、ついさっき日が沈んだばかりの夕焼けが空の跡に残り、すぐそこに夕闇が迫っている。
そんな時、一筋の心に突き刺さるような鋭い感覚が体中にかけ巡った。

この感覚は‥!
小さい時から何度も感じてるこの感覚は‥もうすぐヴァンパイアがくると言う体中の警告音に他ならない。


「起きて、ロワン‥!」

ヒワリはなるべく静かにロワンを起こした。
目をこすり起きたロワンはヒワリが起きていることに驚いた。


「ヒワリ?お前体調は‥?」


「それよりヴァンパイアがくるの。早く止めないと!」

ベットから下りようとしたヒワリだが、ふらついてロワンに支えられる。


「無理はするな。とにかく、今回はエンゼル、フォーンとユラを連れてく。シワスとヒイラギには伝えておくからお前は2人と一緒にいろ」

「でも私が側にいたら‥――」


「そうはさせないさ。たまには頼れ、な?そうじゃないと壊れるぞ?」

ヒワリの肩を軽く叩きロワンは部屋から出て行った。


一階へ下りると、そこではちょうど片付けをみんなでしている最中だった。

PageTop

[Edit]

#21 ヴァンパイアの襲撃 1/5

「おかえりなさい、ロワン、ユラさん」

「ヒワリの様子はどうだ?目覚めたか?」


ユラはエンゼルの横を通り過ぎたがフォーンに見つかってしまう。

「おかえり、ユラ」


相変わらずユラは無口なままだ。


「ヒワリさんはさっき一度起きてフォーンがスリープをかけました」

「スリープ?」


「治ったとしても、心身元気じゃないと。それにあの子心も結構疲れてそうだから寝かせたの」

「そうか‥サンキューな、二人とも」


ロワンはすぐに二階のヒワリの元に向かった。
どうやら、さっきより顔色はよくなったようだ。


「一人で背負うことねぇのによ。まだまだ‥甘いな」


窓は少し開いていて、そこからそよ風が流れた。
つがいのチェルシーもヒワリの横で昼寝をしている。



ヒワリは夢の中で柔らかな黄色に包まれていた。


優しい思い出の記憶。
一つ屋根の下に家族がいる光景。


それが突然、叫び声と悲鳴に変わる。
真っ赤な世界と真っ黒な生き物。
真っ黒な生き物が世界を喰い荒らす。

守られ逃げながら、場所を転々とする。
真っ暗な道。

いつの間にかはぐれて泣いていたら、手を伸ばす人がいた。


『さぁ、おいで』


ヒワリはその人物の手を握る。
そしてその瞬間、目がさめた。

PageTop

[Edit]

やさしい夜。

やさしい日。
気持ちが穏やかな夜。

しばらく会えない日が続く。
ふいに聞いたあの人を私と同じように好いてる先輩のこと。

ショックがある反面、その先輩は綺麗な先輩で。
その分、何かとおしゃれにまで気を配れていない私。
おろそかにしている部分。
少なからず、自分自身に劣等感を抱く。
バカだ、本当にバカだ・・私は。
自分中心に回ってるわけないんだから、
他にも私のようなあの人を好く人は何人もいるのに。
私を好いて欲しいという気持ちは誰でもあるけど、
幸せになって欲しいという気持ちは誰にも負けたくない。

自分に嘘をつかず、自分を信じてほしい。
そして幸せになってほしい。


どうか幸せになってください。

優しい夜。
久々に素直な感情。

あの人のことになると胸が痛くなるくらい好き。
私より幸せになってほしいくらいに。
でもあの人にとって私は・・怪我もして
病気がちで花のないクラスメイトで・・・きっと好きじゃ・・ない。


PageTop

[Edit]

#20 カルネの町へ 3/3



ヒワリは起きてこなかった。
容態を伺っているものの、特に変化は見られない。

そして、つがいのチェルシーはヒワリの側から離れようとしなかった。
じっとヒワリを見つめている。


「そんなにコイツ見ててあきないのか?」


冗談でヒイラギが言うと、チェルシーのオスはチリーンと鳴く。
始めは無謀なモンスターに挑んで怪我をしたのかと思った。
ここにくる狩人も魔術師もみなそうだ。

だからこそヒイラギはいつも思う、自分を大事にしろと。


「一番自分を大事に出来ないやつだな、こいつも」

怪我に理由は関係ない。
自分の愚かさで怪我したやつも、仲間を守ったとかで怪我をしたやつもヒイラギにとっては一緒だった。




翌朝ヒワリは目覚めると見知らぬ場所だったが、隣にはエンゼルやフォーンが側にいて少しほっとした。

「おはよう、ヒワリ」

「おはよう。ここは?」


「ヒイラギさんとシワスさんの家です。シワスさんがおいて下さいました。ユラさんやロワンも来てますよ」


ヒワリはふと自分のケガに気づき治癒していることに驚いていると、フォーンが説明し始める。


「なんだかんだ言っても、ヒイラギが治してくれたんだよ。シワスさんが言ってたんだけど、傷口に毒があったみたい」


「‥‥ヒイラギさんは今どこに?」

「今は他の人を治療しています。会うなら昼休みか診療が終わってからの方がいいですよ」


「そっか‥。なんかごめんね、心配かけて」

フォーンはヒワリの手を握って首を横に振った。


「ヒワリが元気になったら明日の朝出発するってロワンが言ってたよ。だからヒワリはもう少し寝てて」


ヒワリはおとなしくフォーンの言う通りに横になった。
優しくスリープの眠りがヒワリを包み込んだ。




ちょうどその頃、黒い羽を持つ一羽のチェルシーがカルネの町に入り込んだ。
何かを探すように、常に地上を見ながら空を飛ぶ。

そして、ある家の窓の近くまでくると深緑色の髪の少女を見つけ、再び空へ舞い上がった。

黒いチェルシーが再び向かう場所は自分の主。
カルネの町の外れまで飛ぶと、子供のように背が低く紺色のショートカットの髪をした少女の指に留まる。



「なになに?もう見つけちゃったのぉ?」

黒いチェルシーはキーンと耳に残るような甲高く鳴き声を上げた。


「ディアナ、あの子が珍しく怪我をしたんだって!これってチャンスじゃない?」

ディアナと呼ばれたのは赤く長い髪に妖艶な姿の女性だ。
赤い髪に白い肌、黒い服装はよく似合っている。


「調子にのらないの、メノウ。これからたっぷり礼を返すんだから。さて、ちょっと面白いことしてあげましょうか」


「ディアナ、ご機嫌だね♪」


そう言って、メノウは黒いチェルシーに微笑んだ。

PageTop

[Edit]

#19 カルネの町へ 2/3



「お前は自分でその傷治せよ」

ヒイラギの言葉は冷たくヒワリに突き刺さる。


「そんな言い方しなくてもいいのに!」

フォーンが怒りヒイラギに言い放った。


「だってそうだろ?時間外にきたお前らが悪い。それに‥――」

突然ヒイラギの頭に杖が振り下ろされ、ヒイラギは頭を抱え込んだ。



「遥々来た客に失礼だろう、このバカもんが!もう一度、あのお嬢さんをよく診てやれ!」


ヒイラギの後ろから杖をついたおじいさんが現れ、ヒワリに目線をうつしていた。


「あ‥!」

ヒイラギはようやく何かに気付いたのか、おじいさんはため息をついた。

「気付いたのなら、早く治してやるんだ。本当なら立って居るのもままならないはずだ」


その言葉通りヒワリは床に崩れ落ち、傷口は先ほどよりもさらに悪化して一人は立ってないくらいにまできていた。


「ヒワリ!」「ヒワリさん!」

ヒイラギはすぐに駆け寄り傷口を見てみる。
確かに切り傷だが、何か毒草が交っていたのか状態はあまりよくない。

ヒイラギはそのまま床に座り込んで、チェルシーの羽根を一枚使い羽根が光に変わって傷口へと入り込むとケアを使った。
ヒワリの表情も次第に穏やかになる。



「ヒイラギが面倒をおかけしてすまなかった。わしはヒイラギの祖父のシワスだ。良かったら、ここへ泊まっていくといい。この様子だとさっき着いたばかりなんだろう?宿はもう皆閉め始めている頃だしな」


「あともう2人合流する予定なんです。結構幅を取ってしまいますが‥」

「心配するな、一泊なら大丈夫だ。ただお客さんの出入りは朝になれば忙しくなるぞ」


エンゼルは簡単にヒワリやフォーンの自己紹介をした。

「エンゼルとフォーンって言ったかな?夕食の手伝いをしてくれないか?ヒイラギはヒワリの様子見につかせるから人手が足りんのだ」

「俺が見張り!?」


「そりゃそうだろう。急変しないかちゃんと診てるんだぞ」

そう言ってエンゼルやフォーンをつれて二階へ上がっていった。


PageTop

[Edit]

#18 カルネの町へ 1/3

「ここから先はチェルシーの羽根がないと通れません」

2人の守衛兵が立ちふさがり、ヒワリたちをふと見ると、チェルシーを連れていることに驚いた。


「すみません。このチェルシー、狙われていたので一緒に連れてきました。怪我をしていないかだけでも、見てもらえませんか?」
「見たところ怪我はしていないようだが、チェルシーよりキミの方が怪我してるじゃないか。取りあえず、チェルシーとそのまま中に入って治療を受けなさい」


守衛兵は門を開け、ヒワリたちをカルネの町に入れた。
守衛兵の話す通りに、道をたどり治療が受けれる家までたどりついた。


「ここ‥なんでしょうか?」


治療するにはとても小さい家でフォーンがノックをして入ると、中から青い髪の青年が出てきた。



「あの‥ヒイラギさんと言う人はこちらにいらっしゃいますか?怪我の手当てを受けたいのですが‥」

「帰ってくれ。もう診療は終わった」


青年が扉をしめようとすると、エンゼルは必死になる。


「待ってください。診るだけみてもらえませんか?」

「言っただろ?診療は終わったんだ。お前らだけに特別扱い出来ないだろ」


「お願いします。チェルシーだけでも診てあげてください。私は明日の朝でも構いませんから」


切り傷とはいえ妙に痛む手足を気にせず、チェルシーに目を向けると青年はチェルシーを見始めた。



「こっちは大丈夫そうだ。問題はこっちだな、メスの方。翼を怪我してる」

「治せるんですか?」


「当たり前だろ。ここをどこだと思ってるんだ?」


エンゼルの話にそう言い返すと、チェルシーを手に取る。
チェルシーの羽根を使わずに、手元に光を集め、ケアをかけた。

「もしかして貴方がヒイラギさん?」

「他に誰が居る?」


ヒイラギがそう言った後、メスのチェルシーは元気良く飛び立った。
オスも同時に飛び青い二羽は仲良く飛び回る。

その様子をみて、ヒワリはほっと安堵した。

PageTop

[Edit]

#17 青の街道 4/4


 「チェルシー・・?」

もう一度、チリーンと鳴いた。
一声だけで癒されるような不思議な音で二羽はとても仲がいいらしく互いに羽繕いをしている。
そしてちょうどオスがメスの落ちた羽根を拾い上げ、メスもオスの羽根を拾い上げた。


「羽根もらってもいいの?」


ヒワリの問いかけには答えず、ずっと差し出したままだ。
ヒワリは羽根の下に手を持ってくると、そこへ対のチェルシーは羽根を置いた。


「ありがとう」

ヒワリはすぐに羽根をバックへとしまい込んだ。
その直後どこからともなく仕掛けアミが対のチェルシーに向かって飛び込み、チェルシーを捕らえた。
ヒワリはすぐにアミを捕まえ印から剣を取り出すと、アミを切り開いてチェルシーを取り出す。


「早く逃げて」


しかし対のチェルシーは逃げない。
しっかりとヒワリの肩にしがみついたままだ。


「このままだと‥――」


「あそこだ!」
「これであの町に入れる」
「めんどくさい掟だよな」


顔を上げた先に三人の見知らぬ男たちの声が聞こえ、次第に姿も見え始めた。

瞬時にシールドをチェルシーにかける。
草陰から飛び出した男たちが見たのは、破れたアミと肩に対のチェルシーを乗せた少女の姿だった。


「コイツ!逃がしたな!?」

男が何かを投げヒワリの頬はかすり傷ですんだものの、手と足に大きな切り傷が出来た。
飛んできた物は男の手中へと戻り、よく見るとブーメラン型をした飛びナイフのようだ。


「そのチェルシーを渡せ」

「人の物を盗むとはな、容赦はしないぞ?」


ヒワリは無言を貫き傷付いた足と手をかばって、後ろへ後ずさりをする。


「渡さねぇそうだ。仕方ないな」

男たちはヒワリに詰め寄るばかりに、自分たちを囲む魔物に気付いていなかった。
気付いた時にはもうすでに遅く、コオロギような姿の魔物に襲われた。

その隙を見計らい、ヒワリはチェルシーを抱えるように走る。
後ろからは魔物が迫った。



「ヒワリ!」

急にロワンの声が聞こえ同時に矢が魔物を打ち抜き、2つの剣を持ったユラが残りの魔物を消した。


「すごい‥」

「ヒワリ、怪我したの?」

フォーンが駆け寄り、ヒワリの腕にいるチェルシーをみて驚いた。


「つがいのチェルシー?」

「この子たち守ってあげて。私がこの場を引き受けるから」


「何言ってるんですか!早く手当てしないと!」

「でも!」


「魔物は俺とユラで始末する。お前は休め」


ロワンに言われ、ヒワリは少し冷静になった。



「狩人が三人このチェルシーを狙ってたの、気をつけて。あとこれ‥」


ヒワリはバックからチェルシーの羽根を二枚、ロワンに渡した。

「ありがとな」


ヒワリたちが去ったあと、森が少し騒がしくなった。



「ユラ、あと何体いると思う?」

「‥10体」

「そこそこ集まったな」


遠くにいる魔物を定め、ロワンは矢を放った。

PageTop

[Edit]

#16 青の街道 3/4

〈青の街道〉

「本当に青いですね」


しばらく森の中を進むと、徐々に青さが際立ち始めた。
森を見る限り辺りは草木も道も青一色でその間を潜り抜けるように一本道が続いている。


「昔は本道だった道よ。今じゃもう、通る人は限られているけど」

「船ができたからですか?」


エンゼルは透き通るような青さの草の葉を触りながら、フォーンに尋ねる。

「その方が一般の人にはリスクがともわなくて済むからね」


かつては大勢の人で行き来していた道。
それが今では、狩人や魔術師のような多少力のある者たちが鍛錬のために訪れるだけになってしまった。
カルネはそんな人を迎え入れるため、休息の町として狩人や魔術師たちに親しまれている。



「そう言えばカルネに着くまで、チェルシーの羽集めないとな」


ロワンは思い出すように話す。

「チェルシーの羽?」


「簡単に言えば、青い鳥の羽根だ。これがないと、カルネには入れない。ある意味入場料だな」

そう言われたものの、エンゼルにはちんぷんかんぷんだ。


「チェルシーの羽根には傷を治す力があって、カルネでは必要なの。これがないと、傷を治したくでも治せないから」

「羽根‥むしり取ちゃうんですか?」

エンゼルは心配そうに言う。


「中にはそんな人もいるけど、そんなことしても意味ないのよ。チェルシーからもらわないとね。だからいくら力があってもむしり取った羽根じゃダメなの」


フォーンはエンゼルにそう話した。


「なんだか、難しそうですね‥」

「そんなことないって。こういう時はヒワリを使うの」


「えっ?」

急にフォーンに言われヒワリは驚く。


「一様みんなで集めるけど、一番お礼受け取りやすいのはヒワリだから」

「調子良いやつだな‥」


そんなフォーンを見てロワンはあきれる。
森の中部へまで来ると、皆チェルシー探しに専念し始めた。


鳥に珍しく尖り耳が付いていている方がオス、耳がなく青色が濁ったような色がメスで羽根はどちらの物でもかまわない。


「あっ!」

木の間を通り過ぎていくチェルシーをヒワリは目撃し、思わず声に出てしまった。
慌ててチェルシーの後を追いかけたが、周りはほとんど青一色でチェルシーが青で紛れ込みどこに行ったのかさえわからなくなった。


「見失っちゃった‥」


こういう時どうするんだっけ?
楽しいこと考えたら良いんだったかな?


ふとフォーンの言葉を思い出す。
確かそんなこと言っていたような気がしないでもない。


楽しいこと‥。
ヒワリが思い出したのは、今の自分だった。
狙われることなく、公の場に出られること。
昔に比べたらずっと良い。

仲間もいるしそれだけで、十分だった。



チリーン‥――。


ベルのような澄んだ音が鳴り響いた。
驚いてその音の方へ目を向けると、傍に対のチェルシーがヒワリの前に姿を表した。


PageTop

[Edit]

#15 青の街道 2/4


「すみません、ヨルドナさん。謎解けたので入っても大丈夫でしょうか?」

テント前で待つとヨルドナは、テントを開けエンゼルを招き入れた。


「朝早くに申し訳ないです。もうすぐここから出なくちゃいけないので‥」

「それは構わないよ。話によれば、フォーンとユラも加わるそうだが‥。今回は長かったからしばらく寂しくなるかもしれないがね。さて、君の推理を聞こうか」



エンゼルは息を吸って気持ちを落ち着かせた。


「始めは糸を張ってその上を歩いていたのかと思いました。でもそうじゃなくて、あそこには階段があったんですよね?僕らからは階段の影が消えるように光で操作して。あの時、ヒワリさん以外スポットライトが当たっていませんでしたし、周りは薄暗さが残っていました。真っ黒な階段があっても違和感ありません」


「なるほど。君の推理に1つ付け加えるなら、みな階段を明暗によって自分の頭で消していたということになるな」


「ヨルドナさん、推理はどうでしたか?」

「十分楽しめたよ。どうやって気づいたんだい?目の錯覚を利用したこのマジックに」


「ヴィジョンを考えた時に出てきました。意外と簡単だけど、人の目は錯覚を起こしやすいですから」



ヨルドナは頷く。

「ヴィジョンが起きても冷静になることだ。迷いが生まれたら、ますます混乱する。気をつけてな、エンゼル。フォーンとユラをよろしくな」

「忠告ありがとうございます」


エンゼルはお辞儀してヨルドナのテントを去り、ヒワリたちのいるテントまで戻るとみんながエンゼルの帰りを待っていた。


「遅くなりました」

「んで、謎解きはどうだった?」

エンゼルが戻ってきて早々、ロワンが尋ねる。


「昨日の戦闘のおかげでなんとか大丈夫でした」

「良かったな」


ロワンが意外に誉めてくれエンゼルは少し嬉しかった。

「リードの次はカルネの町ね。カルネは青い森の中心にあるし、その途中には崖もあるから」


そうフォーンがヒワリに伝える。

「そうね、魔物も多くなりそうだから気をつけないと」

「道中は"青の街道"と呼ばれている。2人だったら、相当キツい場所だったな。今はエンゼルもフォーン、ユラもいるし休憩しながら進める」


ロワンがそういうと不思議そうにロワンに尋ねた。

「ヒワリさんとロワンは水都コルシェからきたと言ってましたが、コルシェからリードへ行くとき青の街道を通らなかったんですか?半島のこの辺りはこの道しかないですし。僕はコルシェからリードへ船に乗ってきましたが‥」

「あの時は竜馬がいたからな。今回は歩くから休みながらじゃないと体力がもたない。そうそう体力も魔力も切らすなよ」

「じゃそろそろ行こっか?」


フォーンはそうみんなに話した。

PageTop

[Edit]

#14 青の街道 1/4

翌朝ヒワリが目を覚ますと、テントの外でフォーンが待っていた。


「フォーン?呼んでくれたら良かったのに」

「うんん‥すぐ終わるから。あのね、ヒワリ。ここ見てくれる?」


フォーンは長い髪を首筋が見えるように持ち上げると、首の後ろを見るようにヒワリに話した。
言われて見てみると、そこには青色のソレイユの印が刻み込まれていた。

「シルシ‥?」

「ヒワリも持っているんでしょ?印がつく前までは普通だったの。でもある日、強い眠気がきて気づけば床に倒れてた。寝ている間のことはわからないけど」


「どうして印のことを?もしかして昨日の戦闘は‥」

「あたしとユラで観戦してた。印が光ってること、ユラ気にしてたから」


現に印は今も光っていた。淡い青色で光を放ちながら。
そして、呼応するようにヒワリの印も光始める。


「ね、ヒワリ。あたしとユラも旅に加わっていい?あたし、知りたいんだ。なぜ印が出来たか‥。そのためにサーカスで地域を周りながら見つけたかったんだけど、このままじゃ見つかりそうにないから‥」

「でも」


「団長には話してあるの。あたしの里親みたいなものだから簡単じゃなかったけど、戻ってくることを条件に許してくれた。魔法しか使えないけど、ユラは頼りになるよ」


「私はかまわないけど、みんなに話さなくちゃね」

フォーンは緊張が解けたのか、安堵の表情を見せた。
そして、しばらくヒワリと話すとテントから立ち去っていった。



あとで給料をフォーンからもらい旅の支度をすると昼間にはサーカスを、そしてリードを離れることになった。


「人数増えましたね」

そう、エンゼルは楽しそうだった。


「それはそうと、ユラまでいいのか?サーカスの人数、2人も減ったんだぞ?」

「そこは心配ないって。団長、顔広いからすぐに雇えるし」



フォーンはそうロワンの質問に応えた。



「しっかしエンゼル、お前は問題解けたのか?」

「え?」

「ヨルドナに謎かけられたんだろ?」


そういえば、謎解きをヨルドナに伝えそびれていた。

「すぐ伝えに言ってきます!」

そう急いで走り、ヨルドナのテントへと走った。

PageTop

[Edit]

#13 Dinner Time 3/3

機械音のような声が続くと、辺りは静まり返ってヴィジョンの効果は消えていた。
魔物の姿は見当たらない。


「仕留めたか!」


「やれやれ、ディナータイム終わっちゃいましたか。仕方ありませんね‥。でも‥面白いものが見れました。あなたがたは普通とは違うわけですね。今後もマークしておきますよ」


声がして頭上を見上げると、あのさっきのヴァンパイアが羽を広げて高くから見下ろしていた。


「てめぇ、下りてこい!」


「特にその娘。一度味見したいですね」


頭に血が上ったのか、ロワンはすぐに弓を引きヴァンパイアを狙った。
矢は外れヴァンパイアに笑みがこぼれる。



「貴方には何を言っても無駄でしょうから、一旦引くとしましょう。私に食べられるまでそう簡単にくたばらないでくださいね」

ヴァンパイアは次第に夜の闇に紛れて見えなくなった。


「行っちゃいましたね‥」

外は何事もなかったかのように再び静まり返っている。


「それにしてもよくやったね、エンゼル」

「まさかライトを使うとは思わなかったな」


「ヒワリさんやロワンが援護してくれたおかげでいつもより集中できました」


「この様子からすると当分はこないな」

「また‥次の町ですか?」

「そりゃそうだろ?な、ヒワリ?」



ヒワリは聞いていなかったのか、二人の視線に気づくと慌てて聞き直した。


「ごめん、聞いてなかった。何の話してた?」


「次の町へ行く話です」

「ああ‥、そっか。明日出発だもんね」


何事もないようにヒワリは話していたが、ロワンには何か引っかかったようだ。


「あまり気にするなよ?」

「うん、わかってる。先に戻るね」


ヒワリの後ろ姿を見ながら、エンゼルはロワンに話す。


「どうかしたんでしょうか?」

「お前もあまり気にするな。さて俺たちも寝るか」


とは言え気になるエンゼルだったが、気にしても仕方がないのにはかわりなかった。



ところ変わって、ロワンとエンゼルがテントへ戻るところを見守る人物がいた。
その髪は黒く片目には布を当てている。


「あの三人‥」

「三人がどうかした?」


急に現れたフォーンの言葉に驚くことなく、三人がテントへ入る直前まで見ていた。


「少しは驚いてよぉー」

フォーンはそう言いながらもユラに真っ白な食べ物を渡した。


「はい、あんまん。メルシーがサービスしてくれてね。2個は多いから1つユラにあげる」

ユラはあんまんを受け取った。
あんまんにしては冷めていたが、それでもあんまんには変わりない。

「目大丈夫なの?」

元々ユラは誰に対しても無口で口数は少ない方だ。
それでも、フォーンはユラに話しかけ続けた。

少しでも辛い過去が忘れられるように。
でも、ユラが話す機会は滅多にない。
口を開いても、一言二言で終わるのが大抵だった。



「印が光った。それにあの小さい奴、すれ違ったのに気付いてない。三人とも印の持ち主だ」

「印?ユラの目のこと?」

ユラは頷く。


「ってことは治せるかもしれない。エンゼル、ヒワリ、ロワン、あの三人についていけばきっと」

PageTop

[Edit]

#12 Dinner Time 2/3


ロワンが帰ってくると、ヒワリが次に席を立ち、続いてエンゼルも料理を取り始めた。
エンゼルは食事中ずっともやもやがとれないまま料理を口に運んだ。

どれも久しぶりに口にしたものばかりだったが味わって食べてるというよりかは自動的に食事に手を着けている感じだった。


たまに他の席を見ながら、様子を伺っているとユラとたまたま目が合う。
席は遠かったが相変わらず冷たい視線が刺さってくる。
エンゼルは慌てて他の人へと視線を移した。
ユラ以外は純粋に夕食を楽しんでいるようで、笑顔が絶えない。お酒の回りもあってか、陽気な雰囲気に溢れていた。



「さて、そろそろ外に出て見張ろうか。もう行けるか、ヒワリ?あと、エンゼルも」

「あとってなんですか‥。行けますよ」



「じゃ、少し練習な。エンゼル、どんな魔法使えるんだ?」

「攻撃魔法と医療魔法、罠魔法です。あんまり覚えていませんが‥」

「罠魔法か‥、わかった。じゃ今出来る罠魔法使ってみな」


エンゼルは印に手を触れると、ヴィジョンを使った。
大テント、小テントを含めて全体に行き渡り虚像の世界を作り出した。


「なるほど、ヴィジョンか。悪ぃがさっそくお客さんが来ちまった」

「お客さん!?」


ヴィジョンはテント周辺に張っているだけで、中は何ともない。
だから、サーカスの人には怪しまれず対戦出来るわけだ。


「魔物か。親玉はどこだ?」

ロワンが虚像の世界の中で屋根の上を見ると、人にコウモリのような羽の生えた人物が立っていた。



「あれは――ヴァンパイア!」

「それもかなりの血統をもったね」


そう言ってヒワリは身構える。


「ずいぶん、ややこしい魔法を張りましたね。君でしょ、狩人が2体に魔術師が1体。しばらく、お相手致しましょう」


お辞儀をしたかと思うと、突然人形のような魔物が現れた。
次々に分裂するタイプの魔物らしく、一定の数にまで分裂すると独立して襲い始める。


「ヒワリは魔物をやれ。俺は親玉を叩き潰す」

「ぼ、僕は?!」

「エンゼルはヒワリのサポートをしろ。魔物の中に中心がいるはずだ」


ロワンやヒワリの動きは早い。
すかさず、印に手を置くとそこからロワンは弓矢をヒワリは剣を取り出す。

「すごい‥武器が取り出せるんだ」


ロワンやヒワリが魔物とやり合っている間にいつの間にかエンゼルの側に魔物がやって来た。

「うわっ!」


飛びかかってきた魔物はヒワリによって瞬時に消されれる。



「魔物は任せていいから、エンゼルは親玉を探して」

「わかりました」


湧いてくる魔物。
しかしそのほとんどが光に照らされても影が映し出されることなく、同じような動きを繰り返している。
ヴィジョンの中だとは言え異様な光景だった。

「どうすれば‥」


ふとライトを使う手を思いついた。
普段は辺りを照らしたり、目を眩ませるためのものだが。


「ロワン、ヒワリさん!目を瞑ってください!」

かけ声と共に、ライトを高く打ち上げた。
光は空中で錯乱し、急に辺りが白い世界に包まれる。
その中、一体だけ光に消えない魔物がいた。

すかさず、攻撃魔法ファイヤーを使い留めをさす。


PageTop

[Edit]

#11 Dinner Time 1/3


テントの中では旅の途中では食べれないような料理がたくさんテーブルに置かれていた。
バイキング形式らしく、見たこともない料理もあることから各地の伝統的な料理も含まれていることにエンゼルは驚いた。

「すごい!こんなにたくさん‥。このサーカスの料理長は良い腕を持ってますね!」


フォーンはにこっと微笑んでエンゼルに話す。

「メルシーが聞いたらきっと喜ぶわ。でも、食べ残しはダメよ?ゆっくりしていってね」


フォーンはヒワリたちに席を案内すると、用事があるらしく立ち去っていった。


「さて、俺たちも何か取ってくるか。今のうちにしっかり食べておけよ?今日の夜は長くなりそうだしな」

周りの楽しそうな声とは裏腹にロワンの声はいつもより落ちついた声をしている。


「何かあったんですか?」

「ちげぇーよ。これから起こるんだ。まさか、ただのビラ配りで終わったと思ってるわけじゃねぇよな?」


「いやいや、普通そう思いますって!‥でどうするんですか?」
「魔物の討伐だ。お前魔法使えるんだろ?どれくらい使えるか見せてくれないとな」


そう言ってロワンは先に食事を取りにいく。

「とりあえず、食べておいた方がいいってことだよ。いつ魔物が来ても戦えるように」


ヒワリは目の前に並ぶコップや皿を眺めながらエンゼルに話す。


「ヒワリさんも魔法使えるんですか?えっと‥確かサーカスで空中階段を下りていた時も?」

「攻撃魔法、防御魔法、あとは医療魔法が少し。でもサーカスの時は魔法使ってないよ?」

「えっ!?じゃあれは――」


「手品だよ、君。マジックさ」


後ろから声が聞こえ、エンゼルは振り向いた。
エンゼルの後ろにいたのは、片手に料理を山ほど盛り付けた皿をもちぽっちゃりしたお腹、
銀色の髪に手入れされた鼻下のヒゲが印象的なおじさんだった。

「ヨルドナさん、お疲れさまです」

ヨルドナ‥――?
そう聞いてはっとした。
サーカスに出ていたあの魔術師の名前である。


「おお、ヒワリか!今夜は助かったぞ。助手のツナが今朝倒れてな。下手したら、手品がなくなるところだった」

「あなたがヨルドナさん‥?」


エンゼルに尋ねられてヨルドナは少し嬉しそうだ。


「左様、私が魔術師ヨルドナだ。君はエンゼルだね?」

「はい、そうです。あの‥サーカスでの空中階段はどうやって?」


ヨルドナは面白そうにエンゼルに答えた。

「つまり、どうやって魔法を使わずに空中の階段を下りたってことかな?それは一番手品の味噌だよ。わからないことこそ楽しいのだ、エンゼル」

「でも‥気になるんです。ヒントだけでも教えて頂けませんか?」


「ヒントは君が思っている以上に簡単ということだ。誰にでも出来るが、見せるのが一番難しい。答えがわかったら是非とも教えてくれないか?楽しみにしてるよ」


では、とヨルドナは去っていった。



「相変わらず、謎賭けが好きみたいね」

ヒワリはヨルドナの後ろ姿を見ながらそう話す。


「結局、手品じゃなくて魔法なんじゃ?」

「知ってしまった時よりも知らなかった方がいいこともあるよ。手品の種明かしは特に」

PageTop