うぐいす色の実

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#51 絡まれたエンゼル 3/3



「掲示板の前で邪魔だ、坊主」

エンゼルが起き上がると、
目の前には腕っ節の強そうな大男がたちはだかっていた。

大男は取り巻きを携えながら、
エンゼルの後ろにいたヒワリに気づくとおやおやと声をもらした。



「誰かと思えばかの有名な英雄さんだ。おい、ロワンまでいるな。
のこのことお二人さんで戻ってきたのか。
コルシェを捨ててまで大会に出に来るとは大した奴らだ」


取り巻きたちの間で嘲笑が起こる。
威圧的な相手にエンゼルはどうしたらいいかわからず、ヒワリの顔を伺った。
ヒワリも負けじと威圧感を放っている。



「それを言うなら明日の大会で物を言うことね」

ヒワリ自身、これくらいの挑発には慣れていた。
そして、大会前の騒動はお互いにとってもよくない話。

無論、これは絡まれたのに過ぎないのだ。


「覚えておけ!」

大男は舌打ちをすると取り巻きを連れて引き上げていく。

「やるなぁ」「流石だ」

そんな様子を見ていた周りの狩人や魔術師たちはヒワリを口々に褒め噂した。




「…ヒワリさん、すみません。僕のせいで…」

「エンゼルのせいじゃないよ」


ヒワリはエンゼルの前に手を出すと、手を掴んで引き上げた。


「また絡まれないうちに早く行くぞ」

ロワンに言われヒイラギは急いでカルサ通りへ進んで行く。
カルサ通りは坂道に出来た階段の通りで通り沿いにお店が多く点在していた。



「ここだ」

ヒイラギが立ち止まった場所には赤い屋根が特徴的な家で
「リュサ」と書かれた看板には、パンの絵も描かれてあった。

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#50 絡まれたエンゼル 2/3


「カカマドとピート・ハム?どちらにいくんですか?」

「印のことがわかってからだろ?」


エンゼルの質問に今度はヒイラギが話す。


「今日は受付終えたから、町を少し歩こうか。図書館の場所教えないといけないし。
あと、ヒイラギ、シワスさんが言っていたけど、リュサさん達には今日会った方がいいよね?」

「ああ…そういえばそうだったな」



思い出したようにヒイラギは答えた。

「だったら、顔見せるなら早い方がいい」


ユラが答えてもヒイラギは乗り気がしなかったが、しばらく考えると行くという決断をした。

ヒイラギが先へ出ると、バーキン通りからルビー通りへと交差する
あの大きな掲示板があった十字路へ向かった。



【第六掲示板前:バーキン通りからの交差点】



「なぜすぐに行かない」

ヒイラギが先頭を行く中、ユラが横へ並びヒイラギへ聞いたのだった。


「こう言ったら聞こえは悪くなるが、ややこしいことになる。
特にヒワリやフォーンにとってはな」


もう一度ユラが聞き出す前にヒイラギがそう言った時には、
大きな掲示板のある交差点へと辿り着いていた。


左へ行くとルビー通り、右はカルサ通りで図書館へと続く通りに、
このまま真っ直ぐセンター通りを下って行くと大会の会場である
コルシェ・センター・フィールドに出るとヒワリは説明する。


「行き先はどっちなんでしょう?」

周りを見渡すエンゼルに後ろから何かがぶつかり、エンゼルは前へと倒れ込んだ。


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#49 絡まれたエンゼル 1/3


「――…はい、これで予選の出場手続きは完了しました。
大会予選も決勝戦も、同じコルシェ・センター・フィールドで行われます。
決勝戦での資格者は4人。この中で一位が争われます」

シワーズの受付係りの女性から手渡されたのは、
2つのガラス製のカギで一つ一つ形は異なっていた。



「どちらを選んでも構いません。
このカギが参加資格なので、無くさないようにしてください。ご武運を」

そう言われてヒワリは受け取ったカギをロワンに手渡す。


今回の大会ではヒワリとロワンが出ることになった。

予選を通過するまで二人の代わりに、
エンゼル、ユラ、フォーン、ヒイラギの4人は図書館で印の探索をすることになる。




「上手くいくといいのですが」

そう心配するエンゼルにロワンはエンゼルの肩を軽く叩いた。


「大丈夫だ、だろ?」



そう励ますロワンの傍ら、
フォーンが納得してないのかうーんと声をもらしていた。


「にしても大会で時間稼ぎかぁ…。それならミッションでもいいと思うんだけど」

フォーン問いにヒワリが答える。




「大会の方が長く時間が稼げるからだよ。
みんな、しばらくゆっくり出来るし支度もしやすいでしょ?」

「どういうこと?」



ヒワリのしばらくゆっくり出来るという言葉に引っかかりフォーンは不思議に思う。


「コルシェの後は砂漠の町カカマドにしても谷の町ピート・ハムにしても、
町へ行くには砂漠を越えるか山を越えないといけないから支度は十分の方がいいの」

「途中休憩所は確かにあるが、十分とはいえない。今のうち買える物は買っておかないとな」


ヒワリの言葉に付け足すようにロワンがそう言った。

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#48 二つの運命 4/4


「歩き通しだったからな。早く寝た方がいい」

ユラが珍しく口を開き、ヒイラギやユラの言う通りに宿屋へ帰ることになった。




ヒワリが歩き出そうとした瞬間辺りは急に白黒な世界へと変わった。
驚いてみんなを見渡すが、みんな時が止まったように動かなくなった。


「ロワン!みんな!」

ふいにロワンの腕に触れようとするが、手を引こうとしても動く気配はない。
魔法ストップかもしれない、
そう思った時には黒い影に覆われたように辺りがうす暗くなった。


「――…印を持つ者、血の刻印がある者…」

そう口ずさむのは、屋根の上に立ち黒いコートに身を包みフードを被る人物だった。
影に映るのはその人物の影だけでなく大きな翼の影が映っている。

「そして、その資格を持つ者」



そうその人物は言うと、ヒワリに手をさしのべた。
しかし、嫌な予感がしてヒワリはその手をとらなかった。


「拒むというのか」

黒いコートの人物が遠ざかると共にヒワリは目の前が暗闇に包まれていった。





「ヒワリ!」

そう誰かが名前を呼んでいた。
次第に声はっきりしてきて、フォーンとロワンの声だということに気づいた。
その瞬間目が覚めたようにふとロワンとフォーンの顔が映った。


「ヒワリ、大丈夫?ぼーっとしていたけど」

「え…え?」


改めて気付いたヒワリにエンゼルの声が聞こえる。

「きっと疲れのせいですよ。早くシワーズに急ぎましょう」



エンゼルに賛成してシワーズへ戻る最中、
この街で一番高い塔の上にはマントで身を隠す人物の姿がちょうど月に並ぶように
シルエットで映されていた。

マントの裾は風ではためきまるで浮いているようだ。


しかし、その人物もまばたきした瞬間視界からきえ、
白昼夢のように次の瞬間には消えていた。

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#47 二つの運命 3/4


「そっちの運命はね。そして、あの子の選択でもう1つ運命が動き出した。
ただしそれは、ロワンの言う守りは働かない」

「じゃ、どんな運命なんですか?」



エンゼルは勇気を出して、ステラに聞いた。


「もう1つの運命は…――」




そうステラは言いかけたが、いた!というフォーンの声がする方を見ると
前方からヒワリ、フォーン、ヒイラギが近寄ってくるのが見えた。


「三人とも遅いよ!遅いから迎えにきたんだよ?」

ロワンやユラ、エンゼルが黙り込む様子をみてヒワリは心配になった。

「何かあったの?」


ロワンに聞いたが、ぼーっとするロワンにヒワリは「ロワン?」ともう一度声をかけた。


「…さっきステラがいたんだ」

「どこにも見当たらないけど…。何か言われたの?」


ユラとエンゼルはヒワリの一言に気がつき、辺りを見回した。
先ほどまでステラがいた場所にはもうすでに立ち去っていた後だった。
そして、ロワンはなんて答えるのだろうと、エンゼルは心配なった。

先ほど、運命の話をしたばかりだったからだ。



「ソレイユの印の色や形を調べたのかと聞かれたし探すなら図書館か…」

「ステラさんは重大な時にしか現れないから、小さなことでも意味深長になるね」


ヒワリの言葉にステラって誰?とフォーンがきいた。
神出鬼没な女性でなんでも知ってるけど、厳しいヒトとヒワリは説明する。


「とにかく、一度宿屋のシワーズへ戻った方がいい」

そう話すヒイラギにフォーンは頷いた。


「時間制限があるんだよね」

「それもあるけど眠い」


意外さにフォーンはえ?と驚いたが、時間を見てみれば時計の針は21時を指していた。
ヒイラギがそういうのも無理はない。

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#46 二つの運命 2/4


「とぼけないのぉ、頭良いんだから。そこの兄さんが話してたじゃない」


エンゼルはあまりのアルコール臭さに戸惑い、イメージが違ってからか
どう答えていいかわからず戸惑っていると、ユラがエンゼルをかばい、女性の前へと出た。

「あら、弟思いね」

そう女性はクスクス笑った。



「ステラ、あまりエンゼルをいじるな」

その女性――ステラはそうロワンがいうのを耳にすると、
今度はロワンの方へと話題が移った。


「ちゃんと名前言えてるじゃない!だったらちゃんと呼ぶことよ。
それで…ヒワリ、あの子は元気?」

やはり名前で呼ばなかったことにステラは怒っていた。
見た目は怒ってないように見えるが、周りから放つ雰囲気が
トゲトゲしいものに変わりエンゼルは怖くなった。



「一様な。それで…――」

「何が一様よ、ロワン!あたしの目を見くびっているわけぇ?
あの子は今2つの運命を背負ってるのに、それでも一様とでもいうの?」


2つの運命という言葉に、みんなが驚いた。
ロワン自身もどういうことかわからない。


「1つはロワン自身にもわかっているはず。問題はもう一つの方!
あたしに聞きたがっていたことがあるわよね?」


「ソレイユの印…」

ロワンもステラの勢いに戸惑ったがしっかりと答えた。



「その色や形は?ちゃんと調べたの?前にも言ったけどロワンは
あの子を支える側なんだよねぇ。守る側じゃないのよ、その役割は別の人の役割だから」

「ステラ、知っているだろ?俺はロワン・エオローだ。守る義務はある」


酔いが冷めてきたのか、ステラは持っていた酒瓶を口につけたが
中のお酒がなくなったらしく、瓶の口を道へ向け上下に振る仕草をした。

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#45 二つの運命 1/4


【コルシェ:パーキン通りにて】


突然エンゼルののカバンにあるスコープが光を放った。
ちょうど後ろにいていたユラがそのことに気付きエンゼルに言うと、
エンゼルはスコープを取り出した。

羅針盤の中央に針があるように針は光って、ある一点の方向を指していた。



「ヒワリからだな。宿を見つけたらしい」

「みたいですね」


エンゼルは三人で行動していたが、ロワンが行く先々はよくわからないところばかりだった。
宿屋に入ったかと思えばすぐに出て、掲示板を見ればすぐにその場から離れた。

古い知り合いを探しているそうなのだが、結局その知り合いに会うことはなかった。



「ロワン、探していた知り合いって誰を探しているんですか?」

「正確に言うと酒豪の婆さんだ。無類の酒好きでな、
神出鬼没でどこにいるかはその時次第だ。だから見つけにくい」


「その…お婆さんはどういう人なんですか?」


酒豪と聞いて戸惑ったエンゼルだったが、勇気を持って聞いてみた。

「見た目ふわふわした雰囲気だが頭の回転は早い、辛口だが的は射てるし、
魔女と呼ばれてもおかしくねぇな」

「魔女ですか…?」


「まぁ印のことも、その婆さんに聞けばわかると思うんだが。まぁ…なんせ
それはあの婆さん次第だからな。気まぐれだしな」


「誰が気まぐれだってぇ?」


急に後ろから酔っ払いの声がして一斉に後ろを振り向く。
さっきまで何も気配がしなかったことを気にしてユラは身構えた時だった。


「やっぱ君イにはかなわないわー。でもホント、いい心掛け」

声の主は目の前にいる薄いベージュの短髪で酒瓶を直接飲み込む。
その様子はまるで酔っ払いだが、プハァと言う容姿の持ち主は、エンゼルが想像していたような
年老いた老婆の姿ではなく、子供がいてお母さんと呼ばれていそうなそんな小綺麗な女性だった。


「えっと…貴方は?」

エンゼルが質問すると女性はエンゼルの前でアルコール臭い息を吹きかけ、エンゼルはむせた。


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#44 コルシェの街 5/5


シーズ通りの先へ進むと、ある一件の宿屋に目が止まりそこで話を聞くことにした。


見た目は老舗の宿屋のようだったが中にはいると、
意外にも狩人や魔術師、旅人など比較的若い人を見かけた。

受け付けには二人の女性が立ち、そのうちの一人に
ヒワリは話しかけると慣れたように女性が話し始めた。


「ようこそ、シワーズへ。予約済みですか?…って、
貴方ヒワリさん!?ヒワリさんじゃないですか!?」

女性は驚いたように話すが、もちろんヒイラギやフォーンには何が何だかわからなかった。
受け付けの女性の驚いた声で周りが一瞬ヒワリに注がれざわつき始めた。



「急にコルシェの狩人止めてコルシェから出るって言うものですから、
それはもうみんな残念がっていましたよ!
優秀な狩人を失ったってね。今夜は3名様で泊まりですか?」

「い、いいえ。6人なんですが、部屋は空いてますか?」


女性はお待ちくださいといいすぐに個室の管理書類で空きの部屋を確認した。


「206号室と208号室なら空いてますよ。これが鍵になります」

そう言われ女性に手渡された鍵をしまうと、ヒワリはサインしチェックインを済ませる。


「滞在する条件としては必ずミッションを一つでもクリアしてください。
ミッションはシワーズ内にある掲示板にありますので、申し込む際には私に話してください」


ごゆっくりシワーズを、という受け付けの女性に
ヒイラギは滞在中の期間をまだ指定していないことに気付き質問をした。


「シワーズでは最大滞在期間を3日間までにしています。
これにはミッション中、大会出場中の時間は含まれていません。
休息や休憩時のみ時間は加算されていきます」

「大会はいつからあるの?」



フォーンの質問に受け付けの女性は答える。

「大会の受付は明日の正午までになり、大会予選は明後日行われます。
観戦のみでしたら、最終日の決勝戦がオススメします。
詳しくは掲示板に載せているので見て頂けると幸いです」

「ありがとうございます。すみません、そろそろお暇します」


「あ、個人的にですがヒワリさんはもちろん、出場なさいますよね!」

ヒワリは一瞬ためらったが、何も言わず一度シワーズを出ていった。




「そろそろ、エンゼルに合図送った方がいいんじゃないか?」

ヒイラギの案にヒワリは頷き、エンゼルが持つスコープに集中した。
一瞬手元が光ったが次第に消えて行った。


「大丈夫。もうすぐしたらくるよ。今は三人ともパーキン通りかな」


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