うぐいす色の実

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花とアリス(9)

水くみをしていると、傷痕の手を見つめる。
いつ怪我したんだろう?

わからなかったら、花が教えてくれる。


中でも不思議なのは茎にくくられたリボン。
すごく懐かしい。

花にとって大切な人が
お礼にってくれたんだって。

私も会ってみたいと言ったら、少し悲しそうだった。

離ればなれになったのかな?


私は元気になって欲しくて、花びら綺麗だねと言ったら
嬉しそうに私を見てくれた。

茨の道から戻ってくると、怪我してないかどうか聞かれた。
大丈夫だよ。
そう言って微笑んだ。


雨が降れば葉の下で花が大切な人の話をしてくれた。
始めは興味があって聞いていたけど、少し不安になった。

大切な人がいるなら、私がここにいてもいいのかな?


そのことを話すと、花はいてもいいよと答えた。
それでも正直不安だった。


大切な人がくれたリボン。
じゃなぜ、懐かしいと思ったんだろう?

そんなはずがないのに‥。


花に聞きたくても聞けないこと。
でも一度試してみたいことがあった。

リボンを借りて一度髪をくくってみたいと花に聞くと、
花は驚いたが「いいよ」と答えた。


リボンを丁寧にほどいて、
髪を後ろに束ねリボンでくくる。
すると、急に過ごした時間を思い出した。



「守ってくれてありがとう」
大粒の涙があふれ、花の茎に寄り添った。

「思い出したよ‥。
名前は‥貴方に付けてもらっていいかな?」


「でもそうしたら‥帰り道がわからなくなる。
キミはキミの世界に帰れない」
花は心配そうに答える。

「もういいの、帰れなくても。半分はもうここの住人だから。
名前さえあれば住人になれるしそうなったら、ずっと傍に居るよ」
私は涙を拭って花に微笑んだ。

花は私がルールを知っていることに驚き、
どこで知ったのか聞いた。

「あの子から聞いたの。
あの子はこの世界の私で私が間違って来たことで
バランスが崩れたみたい。
貴方はどうしたい?花の傍にいたい?って聞かれて。

傍に居たいって言ったら、
思い出したら名前を貰いなさいって言われたの」



「本当に‥いいの?」
花がそう聞いてきて、私は微笑んで頷く。

「アリス‥でいいかな?キミと初めて会ったとき、
キミがアリスみたいって言ってたから」

「アリス‥良い名前だね。不思議の国のアリスと一緒」


花はキョトンとしていた。
不思議の国のアリスの話を知らないようだ。

私はクスクスと笑った。


「不思議の国のアリスという物語にアリスという女の子が
不思議の国に迷い込むお話。
私も初めはこの世界に迷い込んだからその女の子と重ねたの。

みんなはその名前が私の名前と勘違いしたのね」


「他の名前の方が良かった?」
花は慌てて私に言った。

私は首を振る。
「素敵な名前をありがとう。リボンはもう一度茎に結ぶね」

髪にくくったリボンを解きながら、
もう一度茎に結び直す。


「ねぇ、アリス。その物語教えて。
名前の由来知りたいから」

「だけど、記憶が曖昧だよ?正確じゃないけど‥それでもいい?」

花は頷き、花びらに近い葉に私を乗せて持ち上げた。

不思議‥前まであんなに距離があると思っていたのに、
今はこんなに近い。

嬉しくなってついつい笑みがこぼれる。


「昔々、アリスという女の子がいました‥――」
ウサギを追いかけて、
穴に落ちて不思議の国にたどり着いたアリス。

こちらのアリスは元の世界へ戻れた。

でも、私はこのままでいい。
私の帰る場所はここ――花の傍。

貴方の傍が私の帰る場所――。


―――――― END ―――――――

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