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#67 コルシェ・センター・フィールド大会:前編 1/4

【コルシェ・センター・フィールド:決勝戦】

歓声が一気にどよめきに変わった瞬間をリズは聞き逃さなかった。
大会にいきなり現れた相手。


それでも負ける訳にいかない。
今日の決勝で負ける訳にはいかなかった。

そうリズは決意していた。
それなのに…――。


リズが刃向かった相手はあまりにも強すぎた。
突如として大会の最中に現れた人物はマントをはためかせフードを被っている。


袖から覗かせる長い爪には見覚えがあった。

「お前は!!…――」

大会決勝戦に残った出場者ではない。


狩人の誰がみても正真正銘のヴァンパイアだ。
フードの奥から赤い2つの目がリズを見下ろしていた。





【コルシェ・センター・フィールド:決勝戦――開始直後】

翌朝、コルシェ・センター・フィールドのゲートをくぐり抜けるとちょうどアナウンスが入り
辺りは決勝戦での開幕ムードで開場をわかせていた。


開場だけでなく、外からも歓声が上がっているようだ。
昨日とは違う活気の良さに、エンゼルとフォーンは驚いた。


「今日は一段と盛り上がってるんですね」
「そうそう、一位になったらどうなるの?賞金だけ?」
フォーンはロワンに尋ねる。

「決勝へ進んだ者は前回のチャンピオンと戦う権利を得る。賞金はその後。
勝てば、次のチャンピオンだな」
「なんだ…、期待外れ…」
もっとこう、メダルとか貰えるのかと思った…。
フォーンはそう思いがっかりした。

「一体何期待してたんだ?この大会自体、狩人同士の力比べだろ?」
そんなフォーンの様子をみて、呆れて言ったのはヒイラギだ。
「仕方ないでしょ?大会自体始めてなんだから!」
ムッとしたフォーンは言い返す。
「だとすれば、リズはどうして大会に出てる?戦う必要はないだろ?」

ユラの指摘も一理ある。
しかしそれは誰にもわからなかった。


もしあるとすれば――。
ヒワリは昨日、ヒイラギがリズの話をしていた内容を思い返す。
もし・・・あるとすれば、ヴァンパイアが原因?
もしその事件がなければ、リズはこの道に進まずにこれたのかもしれない。
そんな考えがヒワリの中で横切った。

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#66 春色の優しいクッキー 4/4

部屋のドアを閉め鍵をかけると、テーブルにあったクッキーを包んだ布を渡した。

「コリーさんから貰ったクッキーだよ。何か飲む?」
「いや、これだけでいい」


ヒワリは残ったクッキーに手を伸ばし茶色と白のチェック形をした四角いクッキーを選んだ。
サクサクした外側に、中からココアの風味が口の中に広がった。

「!…美味しい!」

「昔はあれでもクッキーとかパンをあいつは焼いてたんだ。たまに俺も手伝った」


――誰の話をしてるんだろう?
ヒワリはそう思いながらも黙ってヒイラギの話を聞いた。

「あいつが作るクッキーは美味しいって評判だった。優しい味がするって。
けどある日、狩人の取り逃がしたヴァンパイアが逃げる拍子に店を荒らし回ったらしい。
みんな無事だったそうだけど、あれからあいつはクッキーを作ってない」

ヒイラギの話を聞きながら、薄々だがあいつとはリズのことではないかとヒワリは考えた。

「どうして…?」
「…わかんねぇ。あれから…あいつ、変わったな。ただあいつの――リズのクッキーは、
春の優しい味だった」


ヒワリは食べかけのクッキーを眺めながら、リズの作るクッキーがどんな味なのか想像していた。

春色の優しい味。
恐らく、それはみんながいる幸せを意味していたんだろう。



「あっ、話それたけど、一様診とくよ」
「う、うん」

どうやら問題はなさそうだったのか、ヒイラギは一息つく。
「あ、部屋へ戻るんだったら、このパンとそのクッキー、持って行って」
「わかった。迷惑かけたな」


ヒワリは首を横に振り、ドアの前までヒイラギを送り出してまた1人部屋へと戻った。


どうしてヒイラギが急にリズの話をしたのかわからなかったが、少なからずヒワリの
胸の内は複雑な気持ちでいっぱいだった。
少々強引なところもあるが悪い人でないのは、ヒワリにも伝わってくる。


『邪魔をするな』

依然と予選後のリズの言葉がずっと頭の中でこだまする。

問題ないとみたヒイラギの言葉に逆らうように、右側のそでを脱ぎ肩を見ると、
黒い印に異変が起きていた。
カルネの朝、右肩を見た時より、鎖は肩とひじの間まで広がり巻き付くような広がりを見せていた。

リズの言葉に動揺した時、かすかに右肩が締め付けられていくような感覚に陥ったことを
ヒワリは覚えている。


――ヒイラギになんて言えばいいんだろう…

今更、黒い印が広がってきているとはいえない。
そして何より、明日は決勝戦だ。
リズのことも気になるがヒワリは明日のために静かに瞳を閉じた。

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#65 春色の優しいクッキー 3/4

『"そして赤いリンゴが1つ…――"』

母のガーネットが口ずさんでいた歌を思い出していた。
昼間、ぼーっと窓を見つめる母が歌っていた歌。

『"木から落ちて割れた。2つに割れた。2つに割れて1つになった。1つは1つを探して…――"』



「"1つに戻る。1つに戻ったリンゴ、黒と金。赤い薔薇が咲いていた"」

ヒワリが回想を終えると、みんながヒワリに向いて思わずドキッとし急に恥ずかしくなった。
「――…っ!ご、ごめんなさいっ…つい口ずさんじゃって…」


「今のは何の歌?」

フォーンが興味深げにヒワリに聞いた。


「え、えっと…お母さんが歌っていた歌で…詳しいことはわからないけど教えてくれて」
「へぇ、それは俺も初めて聞いたな」


その後みんなの話が飛び交ったがヒワリには話声が聞こえて来なかった。

「ごめんなさい…ちょっと先に部屋へ戻るね」
「ついてくよ」
フォーンが言い終わらないうちにヒワリはドアを開け廊下へと出ていく。


「俺が行く。顔色悪そうだし、明日決勝なんだろ」

「なんだかんだ言って、ヒワリさっきから様子おかしいもんね…」
「怪我したんでしょうか?」

エンゼルの問いにロワンは否定する。

「それはないな。あいつ、すぐに通過したし。そういや、リズに何か言われてたな。
気にするなとは言ったものの…」

「わかった。一様傷は診ておく」

ヒイラギはそう告げると、ヒワリを追って部屋から出た。



シワーズ内の部屋は全部番号がふられており、客室の並びは左端から番号がふられ
フロアはコの字型、中央には三階と一階までを結ぶ階段がある。
先ほどヒイラギがいた部屋は206号室、ヒワリがいる部屋は208号室で右側の一番隅の客室だった。

ヒイラギは208号室へノックする。


「ヒワリ、入ってもいいか?」

「ちょっと待って」
ドア越しからそう聞こえると、しばらくして鍵を開ける音が聞こえるとドアが開きヒワリが顔を出した。


「ヒイラギ…?」
「明日大会だろ?傷とか体調、診とくよ」

「大丈夫、平気だから」
「いいのか?あいつらまた心配するぞ」


ヒワリは少し考えた後、ヒイラギを部屋に招いた。
「とりあえず部屋に入って」

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#64 春色の優しいクッキー 2/4


「ったく、狩人相手に剣を向けるとはな」「ま、なかなか威勢だったが」

周りが少しざわつきながら、少しずつ部屋から出始める。
狩人で女性がいることはそう珍しいことではないが、上位に残るのはそう居なかった。
ヒワリやリズを含め、女性狩人は三人しかいない。そして、もう一人はユズだ。
最初の印象は、身だしなみもきっちりしていてクールさもあるが姉御肌のような人だ。

 
 「あの子、ずいぶん貴方に突っかかるわね。何かしたの?」
「んなわけないだろ。大丈夫か?あまり気にするな」

ユズがリズを見に一度部屋から出て行った。
ロワンはすでに棒を下ろし、ヒワリを心配していた。


「…うん、大丈夫。早くみんなのところに帰ろう」

ヒワリは気を取り直してロワンに微笑んだ。



【パーキン通り:シワーズ】
ヒイラギたちがシワーズへと先に戻り、その後ヒワリたちが戻った。
部屋へ着くとヒイラギがヒワリとロワンに図書館で起きた出来事を説明する。

「――…表紙に印か。で、その本はどうした?」

ロワンの問い掛けにヒイラギは本を二冊、取り出した。


「げっ!!…マジかよ?借りて来たのか?」


隣にいたエンゼルは首を振る。

「持ち出し不可の本を正確には偽物を置いて持ち出してきました」


エンゼルの言葉にヒワリは驚き慌てて背表紙を見ると、持ち出し不可のラベルが書かれていた。

「持ち出したって……図書館の中は魔法使えないのに?」


「いやいや、それがさぁ…なぜか使えるの。リードやサイレンも」

フォーンもそう言い、ヒイラギが続けてヒワリとロワンに説明する。

「そう、魔法が使えた。で、印と同じ表紙の本もあったが、結局わからないことが増えただけだ。
図書館にあったのはソレイユの武勇伝書だったが…ヒワリとロワンはヴァンパイアからオルゴンに
ついて聞いてないか?」

「そうだな…。ソレイユがオルゴンを倒したという昔話くらいか。
キュウソスでは口伝みたいなものだから、詳しい話は聞いてない」


口伝…?
ふと何かを思い出した。浮かんだのは母の記憶だ。

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#63 春色の優しいクッキー 1/4


『――…それでは、本日の予選通過者を発表します!ヒワリ、ロワン、リズ、トール、ムーベン、
ロムリ、ユズ、ナムサ、スカルの9人となります!通過者には明日の決勝戦へ参加できる資格が
貰えます!明日はトーナメント戦!誰に幸運の女神が微笑むのか!見事栄冠に輝いた人物には
前チャンピオンとの一戦を受ける資格が貰えます!次回決勝戦を乞うご期待下さい!』


そうアナウンスが鳴り響き、予選は一旦幕を下ろした。
控え室では予選落選者と決勝進出者に分けられそれぞれの部屋に入る。

「9人か…トーナメントにしちゃ、珍しい」


ロワンの言うとおり、今まで9人という指定はなかった。
このまま、2人対決があるのだとすると、1人余ってしまう。

「何か理由があるのかも。平等だから余りはないはず」


ヒワリがそう話していると、部屋のモニターに先ほどの司会者が現れ、
みんなの自然はモニターに釘付けになった。

『予選通過の皆様、おめでとうございます!明日決勝戦では3人1チームに分かれて
いただきます!こちらはランダムで決めさせていただきますので明日モニターでご確認ください。
では明日の決勝戦、ご健闘祈ります!』


モニターは消え、少し周りはざわついた。
チームで戦うのだろうか?それにしても見知らぬ者同士でチームを組むのは考えられなかった。


「チーム戦ってこと?」

「狩人はチームで組むこともあるからな。当たり前ではあるだろ?」
「でも…」


顔を曇らせるヒワリに遠目から見ていたリズはギュッと手を握り締め、
ヒワリに近づきながら話始めた。

「私なら受けるわ。それとも…やる気がしないの?」

周りにいた狩人たちもリズの声に気付き、彼女へ自然を移した。


「貴方にとったら高見の見物かもしれないけど、貴方は私を侮辱したいの?」
「そういうわけじゃ…!」

ヒワリが否定しようとした時、リズは腰にあった剣を抜き瞬間的にヒワリの首もとへ
剣を突きつけたが、一足遅れてロワンも身近にあった棒を取りリズへと向けた。


「止めろ、リズ。ヴェンはそう教えたか?」

ロワンの言葉に動じることなく、リズはヒワリへ囁いた。

「邪魔をするな」


決意の籠もった言葉を残して、リズは剣をさやへと収め、先に部屋から姿を消した。


カウンター

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Author:渚 日向 /ナギサ ヒナタ

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